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平成13年9月24日

       自らテロ輸入国となった米国

   昨日23日(日)午後4時からのテレビ東京系番組「日高義樹ワシントンリポート」で、政治評論家ロバート・ノバック氏が次のように述べていた。

「我々は(大統領が言うように)民主主義だから標的になったのではない。日本も民主主義だという理由でビンラディンに攻撃されるとは思わない。スウェーデンも民主主義だが攻撃されない。我々は親イスラエルだから攻撃される。彼等はイスラエルを憎み、我々を憎んでいる。それがこの事態を生んだのだ。」

 アメリカ国民でも、分かる人は分かっているし、ちゃんと発言しているという一例である。もちろん、分からない人は分からない。なぜ、アメリカ人でない日本人が、これぐらいのことを公然と言えないのだろうか?

 中東戦争の歴史を見ると、第1次(1948年)から事実上の第5次といえるレバノン戦争(1982年)まで、必ず一方の当事者はイスラエルだった。それが第6次に当たる湾岸危機・戦争(1990-91年)ではアメリカが、直接の被害者ではないのに、自ら総大将を買って出た。

 次は昨2000年秋から再燃したイスラエル内のパレスチナ紛争(インティファーダ)に連続した形で、ニューヨーク、ワシントンの中枢への大規模テロ攻撃が起きた。それをアメリカは「戦争」と受け止めたため、ここに第2次湾岸戦争(第7次中東戦争にあたる)が開始されたと見ることができる。

 2次にわたることになった湾岸戦争は、それまでの中東戦争とは顕著に異なった性格を帯びている。第1に、冷戦が終わり、米ソの代理戦争という一面が完全に消え、アメリカが当事者になったこと。第2に、その結果、アラブないしイスラム過激派の憎しみがイスラエルよりもその背後にいるアメリカに向けられるに至ったこと。第3に、アメリカはなぜ憎まれるのかという真の理由を自国民の目からも覆い隠す必要に迫られ、一見反対しにくい崇高な目的を掲げざるを得なくなったこと、などが挙げられる。

 すなわち第1次湾岸戦争では、独立国たるクウェートに侵略したイラクの行為は世界に対する挑戦だとみなし、国連の負託を受けてアメリカが世界の警察官として行動するというものだった。 今回の米国2都市へのハイジャック機特攻テロは、自由と民主主義に対する「真珠湾攻撃」だから、戦争とみなして受けて立つ。決して「報復」ではない、とする。

 第1次湾岸戦争が、英米(この順序通り)の石油利権を守ると同時に、イスラエルの生存を脅かすイラクを徹底的に叩くチャンスであったということは、日本でもむしろ常識になっていたと思う。今回も同じだ、と上記のノバック氏は示唆しているのである。
 アメリカ政府がどう説明してもいいのだが、その政策がテロを呼び込んでいる事実を警告するのは専門家としての義務であろう。ノバック氏がそう自覚しているかどうかは知らないが、、。

 実際、アメリカにアラブ系のテロが持ち込まれたのは、1993年の世界貿易センター爆破が最初である。これはアラブ系というだけでなくいわゆる爆弾テロのハシリであり、以後、ハリウッドは爆弾パニック映画を雨後の竹の子のごとく生み出すことになる。映画業界がメディア業界と並んでユダヤ系の人脈、金脈の強いところであることを考えると、歴史の皮肉を感じざるを得ない。

 その後のサウジ米軍施設爆破(1996年)、ケニア・タンザニア米大使館同時爆破(1998年)、イエメン・アデン港イージス艦爆破(2000年)といった一連の対米テロに続いて、再度アメリカ本土に史上最大、最悪のテロが実施されたわけである。規模は大きく、より悪質になったことを除けば、事件そのものは決して新しいものではない。アメリカはとっくに「テロ輸入国」に転じていたのである。今後も輸入国であり続けるかどうかは、輸出国を叩きつぶすだけではなく(それは必要悪)、自国の中東政策を大幅に変更できるかどうかにかかっている。(01/09/24)


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