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平成13年12月31日

          ビンラディンも年越し?

 さて21世紀最初の年も今日で終わり。カウントダウンと共にどこかで大型爆発が起きるかどうか。悪いジョークのようだが、クリスマス・テロの警戒警報は靴爆弾テロで危うく現実になる寸前だった。なんと「靴」警報も出ていたという。

 いわゆる情報機関が有効に機能している証拠をやっと見せられたのかなという気もするが、ニューヨーク・タイムズ紙は30日付のネット版で、米国の政府機関がビンラディンとその組織アルカイダの対米テロ計画を前政権から追い続けたのに、対策がいつもなおざりにされていたという長文の調査記事を掲載した。いずれ邦訳が出るのでぜひお読みいただきたい。

 アメリカのメディアは戦争のような危機の初期には政府と一緒になって世論誘導に熱を入れるが、すぐにバランス・バネが働き出すという習性がある。こんどもそろそろそういう時期に入ったと言えるだろう。

 米政府が予期したより早くタリバン政権が崩壊し、アルカイダ兵力も壊滅し、おまけに暫定行政機構まで年内に出来てしまったので、国際世論と米国の戦争目的の間にギャップが目立ってきた。そこに新年早々に何が起きるかの手がかりがある。

 アメリカの目的は「テロ犯を捕まえる、生死に関わらず」(Wanted, dead or alive)であるから、まだそれを果たしていないことは明らかである。しかし、何をどうやって証明するのか。はっきり言って、ビンラディンだけでなく、オマル師も他の幹部の大多数も行方が知れないのはおかしい。

 その疑念と、周辺諸国に航空兵力をまだ増強していること、そしてインド洋の艦隊を必要ないはずなのに維持している事実、等々を考え併せると、やはり目的はイラク、その途中にソマリアという攻撃計画が浮かび上がってくるだろう。
 必ずそうなるというのではなく、そういう戦略があると見て、そうならない転換点は何か、何が起きたときかということに注目するのである。

 イスラエル・パレスチナ紛争とインド・パキスタン紛争の2つが、早くも波及効果として出てきている。テロ/戦争の拡散であることは疑いない。テロ/戦争は区別が曖昧になってしまった。

 もう一つ面白い現象を挙げておこう。暫定行政機構ができた途端、国防省筋(北部同盟)が「アメリカに空爆停止を要請する」と言ったことである。暫定首相に当たるカルザイ議長(パシュトゥーン人)は否定したが、元々機構ができる前から北部同盟は多国籍軍の駐留や兵力、期間に文句を付け通しに付けてきた事実もある。

 自分たちの力で政権を取り戻したのではないことを世界中が知っているのに、こういうことを平気で言う文化とはどういうものだろうか。アフガン人が名にし負う「まつろわぬ民」であることはよく知られている。征服者、支配者にはあくまでも抵抗するという歴史の繰り返しであった。
 支配者が関心を失って退去してしまうと、こんどは部族間で内戦を繰り返す。兵士は勇敢だが命令されることは好まない。

 私は朝鮮半島のことを連想した。戦後、米軍の支配下にあった南側は大韓民国を宣言したあと、李承晩大統領が米軍に出ていけと要求し、米国はあっさりとその通りにしてしまった。それがすぐに北朝鮮の南侵を呼び込んだことは歴史が証明している。
 韓国も北朝鮮も懲りずに、今に至るまで自分たちが日本に対する独立戦争を戦って勝利したと思いたいようだ。最近、中国も意図的にそういう歴史の捏造に力を入れ、こともあろうに米軍偵察機に戦闘機が幅寄せして威張ってみせるまでになった。この結果はご存じの通りだ。

 ということはつまり、アフガンの一民族の無知・無恥現象を嗤うわけにはいかない。それどころか、この「井の中の蛙」文化が世界に蔓延することが恐ろしいと言わねばならない。アメリカに対する批判の中にも「巨大な蛙」は困ったものだという一面があった。米国民やマスコミ人の一部でもそこに気づいてくれたことが、今年最大の事件がもたらした長期的な救いと言えるかもしれない。以て他山の石としましょう。

 では、よいお年をどうぞ、、。(01/12/31)


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