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平成14年2月28日

     ムネオ疑惑の深刻さと恐ろしさ

 田中角栄元総理の「ロッキード事件」については裏読みが語り継がれている。よく知られているのは2通りであって、一つは日本独自の石油開発を急ぎすぎて、アメリカ最大のパワーグループのいわば虎の尾を踏んでしまい、失脚を仕掛けられたというものだ。
 この説を今のエンロン疑惑の拡がりと重ねてみる事情通も多いことだろう。

 もう一つの裏読みは、5億円のリベートが全日空のトライスター機導入を働きかけた報酬などではなく、本当は対潜哨戒機P−3Cの購買(Purchase)決定の報酬だったはずだというものである。

 さて、この2つの見方を比べてみると、前者は国のリーダーとして本来あるべき長期的な国家戦略を持ち、それを実行しようとした総理大臣という姿が見えてくる。たとえそれがドンキホーテであって、巨大な敵に足下をすくわれてあっさりと倒されてしまったのだとしても、それだけの意志と構想力を持ったリーダーがいたということは評価したくなるだろう。

 しかし2番目の見方をとるとどうだろうか。国の防衛に直結する軍用機調達をネタに、巨額のリベートをフトコロに入れようとしたことになる。途上国ならあり得るかもしれないが、とても日本の首相が考えることではないといえるだろう。私は日本人として心情的に、この説には与したくないと考えるものである。

 そこで問題はムネオ疑惑の拡がりである。彼が一議員として、前者の国家戦略に関わるような行動をとると同時に、後者に位置づけられる売国的リベート取り入れを広範に図ってきたことが明らかになってきた。
 これは風化したロッキード事件の裏読みとは違って、現在進行形の事件であり、その気になれば解明することは決して難しくはない疑惑複合体である。

 なかで一番重要なのは、領土問題の交渉を外部から強引に「2島先行返還」路線にネジ曲げた経緯である。この問題は角栄総理のエネルギー開発構想と同じで、積極的に評価すべきことなのか、それとも故意に大きすぎて見えにくい利権構造を作ろうとしたものなのか、そこが本当のキーポイントである。

 北方領土を自分個人のために取り引きしようとした先駆者(?)に河野一郎という実力者がいる。彼もムネオ議員と同じ農水族のボスだったというところがミソだ。外務省抜きでソ連要人と密談し、領土を売ったのではないかと後々まで疑いをかけられた。一介の新聞記者出身なのに、北海道に牧場を買い入れ競走馬を何十頭も飼っていた。
 北海道はカリフォルニアみたいに「Golden State」なのか。ある種の政治家にとって、見果てぬ夢は北方領土に広がっていくのだろうか?

   歴史は繰り返す。登場人物はどんどん小物になるが、、。(02/02/28)


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