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平成15年5月10日

        SARSが「中国人文化圏」に拡がる理由

 米軍のバグダッド制圧からちょうど1ヶ月。戦争の総括としてイラク軍兵士の証言などが報道されるようになり、やはり全く戦争などと呼べるものでなかったことが明らかになってきた。

 私が公表した予想のたぐいは、このコラムと3月20日の開戦空爆直前のテレビ朝日「スーパーモーニング」特番(3時間)だけだが、ほとんど間違いはなかったようだ。「短期決着」「空爆で壊滅」「地上戦より集団投降」「市街戦ほとんどない」と述べた通りだった。  投降者がもっと多いと予想していたのが少し外れたが、空爆の恐ろしさに部隊ぐるみで脱走(解散)してしまったとのこと(東京新聞、5月10日)。

 結局、バグダッド周辺と市街では約10万人の「精鋭」が逃亡し、それ以前に数万人(10万に近い?)が空爆と砲撃で戦死したものと推定される。他に捕虜が約9千人で内7千人はすでに釈放された。イラク側の戦闘行為は主として、「サダム・フェダイーン」など軽武装の準軍隊(Paramilitary)が道に迷った米軍の補給部隊を襲ったぐらいで、戦車隊同士の「会戦」は1度もないまま終わってしまった。
 イラク軍は「張り子のトラ」というより、それ以下の存在で、独裁者が国民を支配するための機能しか与えていなかったというべきだろう。
 「見通し的中」の余勢(?)を駆って、こんどはイラク戦争より世界経済への影響が大きいのではないかといわれる新型肺炎について、まだどこにも現れていない見方をいま書いておくことにする。

 少々専門外のことに言及するが、知っている人は知っていても、あまりに恐ろしくて公けに口にできないこともある。特にマスメディアが書くに書けないことや、公的機関が発表できないこともある。それをこのコラムなら書けるという場合もある。

 前置きはこのくらいにして、SARSがなぜ中国、香港で多数の犠牲者を出し、シンガポール、台湾に拡散し、さらにトロントのチャイナタウンに飛び火したのか?
 震源地が広東省だということは分かっても、感染者の半数はなぜ感染したのか経路が不明だという。ここがいちばん不気味なところである。咳などの飛沫感染か、空気感染か、さらには接触感染まで疑われるに至っている。

 ここで私が直感するのは、中国人は未だに「痰吐き、手鼻」の習慣を捨てていないということである。道でも廊下でもところかまわず痰を吐き、手鼻をかむ。それが乾き、菌が舞い上がる。せき・くしゃみの飛沫どころではない。飛沫感染プラス空気感染のナゾはここにあるのではないか。
 高層マンションで集団感染した理由も、これなら説明できる。単にエレベーターの中で咳をしたというような、先進国的解釈では説明がつかなかったからナゾだったのだ。

 おまけにWHOの発表では、乾燥した空気中でもこのウィルスは2日生きることがあるという。接触感染も十分あり得ることになる。

 かつて中国の最高実力者だったトウ小平(タンシャオピン)氏が、外国の賓客を人民大会堂で引見している場面で、イスの足元には必ず痰ツボが置かれていたものだ。客の話では、会話中に遠慮なく「ガーッ、ペッ」とやっていたという。手バナはどうだったろうか?

 日本でも30年ぐらい前まで、駅のホームに白いホウロウの痰ツボが置いてあった。灰皿代わりにも使われるようになり、いつの間にか姿を消した。現在に残る中国の習慣を笑う資格は十分ないかもしれないが、日本と中国の衛生観念の違いはこうも恐ろしいのである。

 北京や上海などの先進地域では、地方に比べて相当マシになっていることだろう。しかし、そこに地方からやってくる人々はどうだろうか。高層マンションに住んでいるのはエリート層であっても、息子や孫を訪ねて田舎からやってくる人たちがところ構わず「ガーッ、ペッ」とやっていたら、このウィルスは都会をあっという間に汚染していくことになる。

 中国政府が自国民に対して、痰吐き、手バナの習慣をやめるよう呼びかけたという話はまだ聞かない。しかし、いまそう発表したらエライことになるのは目に見えている。なにしろ、65歳以上の患者死亡率は50%なのだから、世界中から中国への渡航者がゼロに近くなるだろう。中国からの渡航者は世界中で受け入れ拒否されるだろう。先進国のチャイナタウンはどうなるだろうか?

 考えるだけで恐ろしくなるだろう。中国と中国人、その海外コミュニティーに及ぼす影響、そして世界経済への衝撃、、。  民族的習慣を最大限に利用して自己拡大を謀るウィルスが出現した。もしそうだとしたら、われわれは何を教訓として受け取るべきなのだろうか?(03/05/10)


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