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平成15年11月17日

         改憲か護憲か、それが二大政党を分ける?

 総選挙の結果が確定してから1週間になるが、誰もすっきりとその結果を分析できないようだ。こんなことは珍しい。
 昨日のテレ朝「サンデープロジェクト」では、民主党の小沢一郎氏が「民主党は負けたんだ」と言い切って、改めて政界に波紋を広げている。

 同党の菅直人代表はもちろん、「勝った勝った!」とはしゃいでいるのだから、一応無役の一党員が公然と「負けだよ」というのは尋常でない。

 民主党が寄せ集めの集団であることはいうまでもないが、そういう党が大きくなって、二大政党制を自称するまでになった。そのこと自体が政界の再編成を促す原動力になる。これを「ガラガラポン」と呼んでいる。

 私の見るところ、今回の選挙でいちばんはっきりしたことは「社共の壊滅」である。土井社民党は18議席から6議席に、志位共産党は20議席から9議席に激減した。
 投票率が予想に反して低かったのだから、理論的には組織政党といわれる社共両党が相対的に有利になったはずの選挙だ。それがこのていたらくであるから、両党の壊滅と断じても、どこからも抗議は来ないだろう。

 シャキョーというのは、昔懐かしい響きである。この2党は長いこと、合わせて3割前後の支持層を確保していた。憲法改正の発議は両院で、総議員の3分の2以上の賛成を必要条件としている。したがって、シャキョーががんばっている間は、物理的に改憲は不可能だった。

 こんどの総選挙のいちばん重要な結果は、この改憲阻止勢力をほとんど無に等しくしたことである。真っ向から「護憲」「平和」という従来からの看板を掲げた両党が壊滅した。わが国の世論がはっきりと変わり始めたことを物語っている。

 問題はこの先の分析である。こんどの結果は民主党に比例区では第1党の地位を与えたが、実は民主党には護憲勢力が根強くはびこっている。だから党としては「論憲」(議論には応じる)、「創憲」(改正論議をすりかえ)というような言葉のマヤカシで選挙を乗り切った。

   与党の一角を担い、今回の真の勝者ともいわれる公明党は、隠しようのない護憲勢力である。自民党と連立を組むからには改憲反対というわけにはいかないので、「加憲」という珍妙な熟語を発明した。これは環境権などの新しい権利を現行憲法に付け加えるという意味なのだそうだ。
 つまり、肝心カナメの9条をはじめ、現行憲法の条文を変える気は全くないということである。

 このように民主党のなかにも、与党公明党の中にも、また自民党の中にも、「隠れ護憲派」がたくさん混じっている。それが実態だ。シャキョーに愛想を尽かして離れた層は、いきなり自民党には投票できないだろう。だから今回は、あえて投票に行かないという選択をしたのではないだろうか。

 公明党は前回に比べ、比例区で約百万票増やしたことになるが、その多くは公明党を自民党並の改憲指向だと誤解したのかもしれない。これは重要なポイントである。

 したがって、この誤解やねじれ現象の顕在化が、次の国政選挙を左右することになる可能性が強い。数年前、加藤紘一氏が「次期総理大臣候補」ナンバーワンといわれていたころ、「大きな政府か、小さな政府か」で二大政党が政権交代することになるだろう、と語っていたのを思い出す。

 加藤氏はカムバックしたが、氏の予想はどうやら外れそうだ。もう大きな政府など誰も考えない時代に入った。二大政党の対立軸は(あるとするならば)、改憲党か護憲党かということになるだろう。
 そういう方向に向かうとすれば、必然的に「ガラガラポン」にならざるを得ないというわけだ。

 自民党も民主党も再分裂する。そうならないと改憲も視野に入ってこない。小泉首相の影は薄くなった。ユウセイや構造改革のかけ声ではもう誰もカンドーしない。歯車は確実に一つ回った。(03/11/17)


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