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平成16年5月17日

          大成功約束された? 小泉再訪朝

 今週末が楽しみだ。小泉首相の唐突な北朝鮮訪問は、驚くような成功を約束されている可能性があるからだ。

 その根拠は、4月22日に北朝鮮の中国国境にほど近い竜川(リョンチョン)駅で起きた大爆発事故である。
 この爆発の規模は、当初、北側の説明では、1トン爆弾百個(100トン)にも相当するもので、農業用の硝酸アンモニウムが電線から引火して爆発した事故だとされた。

 しかし5月14日の共同電によると、ウィーンの包括的核実験禁止条約(CTBT)機構が地震波データを集めて検討した結果、爆発の規模は約8倍の800トン級に達することが分かった。地震の強さではマグニチュード3.6に相当するという。

 この「事故」の奇妙さは枚挙にいとまがない。隠しようもない大爆発だったのに、爆発しにくい農薬とは変だ。すぐさま国際支援が求められたぐらいの大惨事なのに、トップである金正日・国防委員長がいまだに見舞いに訪れていないこと、そして何よりも、金正日が中国から専用列車で帰国し、数時間前に通過した現場であることが、単なる事故でないことを証明しているようなものである。

 首脳が専用機で飛び回る時代だというのに、時代遅れの防弾列車でモスクワや北京を訪問するというのは、父親の金日成が暗殺を恐れて可能性の低い交通手段を好んだという故知に習っているからだ。
 その列車が通過する駅や線路際に、飛び抜けて大量の爆発物が存在したということが、そもそもあり得ないことなのである。

 それが現実にあり得たということは、独裁者の目からすれば、暗殺計画が進行していたという以外には考えられない。ここが最も重要な視点である。事実や客観性はこの際、問題ではないのだ。

 一説によると、シリアが北朝鮮から購入したスカッド・ミサイルを返品し、その液体燃料を積んだタンク車が、シリア人技術者と共に中国側から北朝鮮に入ってきたのではないかという。
 ミサイルの液体燃料なら、あのぐらいの強烈な爆発は妥当と考えられる。なぜ中国国境に近い駅に存在したのかも説明はつく。もしかすると、鉄道関係者でも、この危険な臨時貨物の入境を知らなかった可能性が高い。

 問題は、それが爆発した事実である。たとえ、暗殺の意図がなく、警告の意味で、お召し列車が通過した数時間後に爆発させたのだとしても、独裁者に与える恐怖は同じである。
 これは、リビアの指導者カダフィ大佐をおとなしくさせた方法を思い起こさせるものだ。当コラムで既に書いたが、1986年4月15日、レーガン大統領はカダフィの寝室を留守と知りつつ大規模に爆撃してみせた。それで実際に、暴れん坊カダフィの国家テロは影を潜め、昨年のイラク戦争を契機に大量破壊兵器の開発を自ら放棄してみせるまでに軟化した。(「動機、目的、メッセージ」平成13年9月18日参照)

 シリアも同じような状況になっている。もはや北朝鮮と組んでアメリカや国際社会に挑戦する考えはない。北朝鮮との軍事協力も迷惑なものになってしまった。
 とすれば、アメリカにすり寄る媚態として、思い切った謀略を仕掛けたか?

 また、中国だって同じことを考えても不思議はない。すなわち、関係諸国の利害は意外なほど共通しているのである。

 そうだとすれば、この機をとらえて小泉さんが再度、北朝鮮に行ってキム氏に会ってこようと考えたのは正解である。あんな大爆発で再度狙われたら、とキム氏が震えているのは間違いないのだから、小泉さんの言うことは全部呑む可能性が高い。うまく持ちかければ、だが、、。

 前回の訪朝では、せっかくのイラク攻撃前の脅しが有効なときだったのに、それをうまく活用しきれなかったうらみがある。拉致を謝罪させたのに、それを平壌宣言に明文化させる努力さえしなかった。

 こんどのタイミングの読みは誰の進言によるものだろうか? 日本人ではなさそうだし、まして官邸内ではないだろう。ライス補佐官だったら面白いんだけどな。大爆発を仕掛けた側のヒトであることは想像つきますが、、。(04/05/17)




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