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平成17年3月14日

            「イメージは戦略」、企業も国も、、

 一般にイメージ戦略といえば、なんとなく「イメージを高める戦略」という意味に取るだろう。しかし、違うのである。

 イメージはイコール「戦略」であるということを、ホリえもんが実証している。イメージは戦略そのものの表現だ、と理解するのに非常にいい実例を示しているのである。その逆の例、つまりダメな見本が日本である。

 どこでもドア、ならぬライブドアを自在に操る堀江社長は、誰がどこから見ても「出る杭」である。それを叩くのはどこから見てもエスタブリッシュメント(既存業界)の幹部たちである。
 ところが、「出る杭は打たれる」という格言を誰でも知っているから、世間は反射的にホリえもんの味方につくことになる。これが、この騒動の核心だ。

 堀江氏が最終的に勝利者となり、日本のビル・ゲイツとなるかどうかは分からない。しかし、もうすでに歴史に残る人物になったことは確かだろう。
 彼は意図的に出る杭を演じ、プロ野球業界と新聞メディアの旧世界を刺激し、「出る杭を打つ」勢力を誘い出した。その第2幕として、こんどはもっと劇的な演出で、最後の護送船団といわれる放送メディア業界の古さをあぶり出した。

 これはイメージと戦略を一体と考える理論からすると、カンペキッと言っていいほどの具体例である。たとえば、幕末の志士たちを重ねてみればよい。彼らは尊皇攘夷を唱えて幕府を倒すことをイメージしたが、それは戦略そのものであり、イメージと戦略を区別して行動したわけではない。
 ホリえもんの行動も同じで、彼は「出る杭イメージ」をビジネス戦略のために演出しているのではないし、その逆でもない。2つは一体不離のものである。

 日本がバブル崩壊のあと永く閉塞状態にあることが、イメージ戦略成功の背景にあることも見逃せない。世間は不透明な先行きを打開する荒療治を小泉首相に期待した。そして半ば裏切られ、やっぱり政治家はダメかとあきらめかけた。そこに現れたのがホリえもんだったのである。

 日本を再生させるには、出る杭が出てこないとダメだと分かっている。

 誰でも、出る杭を打つな、おれも出る杭をやってみたい、と思っている。しかし、実際にはそう行動できない。誰か代わりにやってくれないかな、と思っている。それをイメージ通りに、いやそれを上回る勢いでやってくれる人物が出現した。
 おまけに、絵に描いたような「叩き手」が、政府与党のなかから現れた。こんなに理想的な悪役はめったに出てこない。ナベツネはまだ愛嬌があったなぁ。

 政府与党は大慌てで会社法や電波法の隙間を埋めようと走り出し、異例の超スピードで時代に逆行する法令改正に向かっている。海外から見れば、明らかに小泉政権はまだ「佐幕」派なんだなというイメージになる。なかでもブッシュ政権や米議会の要人は、その急ぎぶりと牛肉問題の超スローぶりを比べてみないわけにはいかないだろう。

 日経新聞の経営者アンケートでは、ライブドアの言い分をほぼ全面的に認めた東京地裁の仮処分決定を、実に7割もの企業経営者と10割の市場関係者が「妥当だ」とみている(3/13付)。
 日本はこの司法の公正さと経営者層の常識、そして市場の健全性によって救われているというべきだろう。政府の逆向きのイメージをかろうじて相殺している。

 企業のほうをみてみると、フジサンケイグループは「イメージは戦略」を全く理解していなかったと言わざるを得ない。
 フジテレビは自他共に認める「エンタメ」路線で成長してきた。しかし産経新聞は全く次元の違う愛国「正論」路線を売り物にしている。私は産経新聞の応援団を自認している立場なので、この路線を否定するようなホリえもんには同調し得ない。しかし、エンタメTVと産経新聞は互いにイメージを殺し合って、グループ効果を発揮していないのではないかと、かねがね疑問に思っていた。

 これこそ戦略の失敗、というより完全な欠如であり、そこをホリえもんにグサッと突かれたというしかない(鹿内)だろう。

 このようなグループ内の矛盾をどうするかについては、やはりイメージを戦略として考えれば自ずから答えが出てくる。すなわち、産経新聞の社員が一団となって親会社から株式を買い取り、フジグループから独立するのがベストの解決策だ。看板の「正論」執筆陣も、社員に準じて出資者となったらいい。

 そういう活字媒体が健全に機能し、経営も成り立ったときに初めて日本は世界に対して、「イメージは戦略」を実践していることになるのではないか。

 ちょうど百年前、日本はイメージを戦略としてうまく機能させ、帝政ロシアとの戦争に勝利した。そのあとは失敗の連続である。なぜだろうか。
 ホリえもんは、出るべくして出てきたキャラクターである。(05/03/14)



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