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平成19年10月28日

       福田首相ならできる、ゆとり過ぎ祝日の是正

 最近、「そんなことも知らないのか、無知だなあ」という意味で、「ゆとりだ」と使うのだそうだ。

 これは解説を必要としないだろう。今月24日に公表された小中学生の全国学力テスト結果では、小人数学級でゆとり時間をうまく学習に使った秋田県がトップクラスで、逆にゆとり教育で学習時間を減らした沖縄県が小中共に47位とビリだった。
 メディアは教科書検定問題などがホットなので、遠慮して最下位の県については「経済的要因」と報道しているようだ。

 世の中は、ゆとり教育の見直しに向けてコンセンサスができた。こんな間違った政策がよくも採用されたものだと、改めて怒りがこみ上げてくる。勉強という熟語は、もともと「強いて、勉める」という意味だから、ゆとりを与えてはいけないという教訓を含んでいる。
 授業時間を減らせば学力が低下するのは当たり前で、もともと教師にゆとり時間を与えるのが真の目的だったという裏読みもあるくらいだ。

 さて、ゆとりは学校だけの問題ではない。国民の祝日が多くなりすぎたのも、ゆとり過ぎとして見直さなければならないだろう。いいチャンスである。

 本当は、バブル景気が破裂してほとんどゼロ成長の時代に入ったとき、ゆとりどころか、休日を返上してでもみんな働こうというスローガンが出てしかるべきだった。
 それなのに、実際は全く正反対に、休日を増やそう、それも月曜日を休みにして連休にしようと政治家が言い出したのだ。

 いわゆる「ハッピーマンデー法」がそれである。1998年10月に成立した第1弾で、2000年から、成人の日と体育の日を、それぞれ1月、10月の第2月曜日にした。さらに01年6月に成立した第2弾によって、03年から、海の日と敬老の日を、それぞれ7月、9月の第3月曜日にしてしまった。

 もともと1973年から、祝日が日曜日に重なる場合は、翌月曜日が休みになる(いわゆる振替休日)というありがたい(と、当時は思った)制度が根付いていたので、月曜日の休日がにわかに急増したわけである。

 これで頭を抱えたのが、大学を含む全教育機関である。

 月曜日は週の初めで授業時限はフルに詰まっているのが普通だ。金曜日になると、特に大学では、科目が詰まっていないこともある。世間の常識でも月曜日は大事で忙しい。それなのに月曜日を目の敵にして(?)、一気に月曜休日を急増させた結果、教育機関は皆、月曜日の授業をどう補ったらいいか、毎年、頭を悩ませることになってしまった。
 私の勤務校では今年度、前期と後期の最後の週に、月曜時限がそっくり他の曜日を乗っ取るように作られている。侵略だ! 
 
 現在、日本の祝日は年間14日で、これに5月4日を加えて15日。世界でも最多の部に入ると言われている。もっと多い国もあるようだが、日本は元日(祝日)を挟んで合計4日か、多くの人は12月30日から5日連続で休む習慣があるので、実質は世界で最も公的休日の多い国になっていると思われる。
 ちなみにアメリカの公的休日は7日か8日しかなく、おまけに4日続けて休めるのは11月第4木曜日からの感謝祭(Thanksgiving)だけである。

 「国民の皆さん、ゆとり過ぎると日本は立ち直れません。もっと働きましょう!」、Let's work harder と福田さんは呼びかけて、「国民の祝日に関する法律」改正に着手してほしい。

 第1段階としては、まず月曜日に休むのを全廃し、必要なものだけを土曜日に振り替えることにする。またすでに歴史的役割を終えている祝日を廃止する。
 この原則を適用して、成人の日(1月第2月曜日)を廃止すれば、正月休みが終わって、さあ働こうという矢先に月曜日が休みになるのを是正できる。
 それでなくても、地方自治体では前年の夏休み中(帰省中)に成人式をやってしまうところが増えてきているので、成人の日を廃止するのは極めて合理的と言えよう。成人式をするかしないかはこの法律と関係がない。

 第2段階としては、合理性の弱いもの、不都合に連続してしまうものを見直すこととする。たとえば、過去の天皇誕生日を祝日として残すと、累代を重ねる限り祝日が増え続けるという不合理性が生じる。憲法記念日も同じで、ドイツの基本法のように三十数回も改正すると、記念日の生じる余地などないだろう。

 敬老の日はあってもいいが、2日後に秋分の日(9月23日頃)が来る場合があり、その間の火曜日も休日になるから4日連休となる。こんなご都合主義を誰が考えたのだろうか。
 これは、もともとの秋分の日が「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」(同法第2条)という趣旨なのだから、似たような趣旨の敬老の日と重ねて祝えばいい話だ。

 また体育の日は、東京オリンピックの開会式の日で、晴れの特異日を選んだという来歴がよく知られている。だからこそ10月10日だったのに、なぜ日を特定せずに月曜日にずらしたのか、全く理解に苦しむ休日になってしまった。
 これを10日前後の土曜日に移動させ、実際に運動会をやりやすいように工夫したらどうだろうか。土曜日にすれば家族が参加し易くなり、翌日に休養を取ることができる。雨天順延も容易になる。

 ひとつ一つを取り出すと異論反論にいとまがないかもしれないが、要は戦後増える一方だった祝日を、初めて減らす方向で考えようという提案である。

 90年代の初め、冷戦構造が崩壊し、ソ連が解体され、そして日本のバブルが崩壊したあと、日本はとるべき対策の多くをとり得ず、あるいは間違った方向に走ってしまった。このゆとり過ぎも明らかに間違いだった。
 それに気がつけば、政治のやるべきことはすぐ目の前にあるのではないだろうか。(07/10/28)


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