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国際政策コラム<よむ地球きる世界>No.150
    by 大礒正美(国際政治学者、シンクタンク大礒事務所代表)

平成23年10月26日

       F-4、F-2、F-15の戦闘機3種更新は時代遅れ

 当コラムでは2009年6月に「米がF-22ステルス戦闘機を輸出しないならリースを申し入れることと、未完成のF-35の日本仕様開発」という提案を行なった(No.122)。

 リース方式の取得に同意する識者もあったが、政府が動いたという兆候は見られないまま、同年9月、国家安全保障を軽視する民主党政権が発足した。そして戦闘機更新問題に関しても2年以上の月日が空費された。

 先月末に国産(日米共同開発)のF-2支援戦闘機(対地対艦攻撃機)の生産が終了し、また年内に旧式主力戦闘機F-4の後継機種を決定する段階になったので、当コラムの提案を少し修正することにした。

 考え方の出発点は、候補3機種のうち唯一の「第5世代」戦闘機であるF-35はステルス性能がウリだが、それ故に日本に先端技術を開示しない(ブラックボックス)という現実である。

 つまり米英主導の国際共同開発に日本は全く貢献していないのだから、日本が欲しいならば後回しで完成品を買えということであろう。それはそれで筋が通っている。

 したがって日本も筋を通し、主体的に「第5・5世代」機となるF-35改(仮称)の共同開発を関係国に呼びかける。もちろん政府は「武器輸出三原則」を悔い改める必要がある。
 日本以外の関係国(米英伊等)はF-35の生産調達と並行して進めるわけだから、改良バージョンの開発は比較的短期間で済むだろう。

 時間的には、いまF-35の採用を決定したとしても、予定では5年後の2016年度に1号機を取得できるかどうか、たぶん無理だと思われる。
 それを日本が加わった新開発で、15年後にF-35改の1号機を受け取れるように計画したらどうだろうか。

 次にその15年間をいかに有効に使うかを考える。国産F-2の生産が終了し、後が続かないと我が国の戦闘機製造の基盤が失われると懸念されるが、だからこそ、自前のステルス機や無人機などの研究開発を思い切って強化拡大する好機だとも言えよう。

 日本は宇宙開発で、小惑星探査機<はやぶさ>や宇宙ステーション補給機(HTV)など、アメリカでさえ一目置く独自技術を見せつけている。

 同じことを戦闘機開発でも考えるべきなのである。米国が対等に交渉に来るぐらいの独自技術を開発し、共同開発になくてはならない貢献をする。
 そうなって初めて日本は、最先端の防衛装備を常に更新し続けることが可能になる。

 第3に、最近の戦闘機は初めからマルチロール(多用途)を基本に設計されており、従来のようなF-4の代替に1兆円、そして次はF-2の後継にまた1兆円という繰り返しが現実と合わなくなってきた。

 むしろ思い切って両機種を合わせた後継として、国産ステルス戦闘機を開発するほうが合理的だ。2兆円使えると考えればいい。その技術を持ってF-35改の国際共同開発をリードするのである。
 もともと日本は、民間企業が開発した電波吸収塗料を米国に提供した実績もあり、ステルス技術の蓄積は相当の水準に達していると思われる。

 これからの15年間、国産ステルス機の開発を主柱とし、現行F-15主力戦闘機200機とF-2支援戦闘機群の維持・能力向上を支柱として、次の時代を準備する。

 その間の保険として、「F-22をリースで取得したい」というオファーを米国に出し続ける。これは米国に対しても周辺諸国に対しても保険になるのである。
 
 米国は対外政策の重点をアジア太平洋に戻し始めた。中国の海洋進出に対応して今後どういう方針を打ち出してくるか、状況次第でどうにでも変わるはずだ。
 F-22とF-35の組み合わせをどうするか、米国内でもまだまだ流動的なのである。

 日本は主体的に保険をかけるという発想を持つ必要がある。(おおいそ・まさよし 2011/10/26)


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