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国際政策コラム<よむ地球きる世界>No.169
    by 大礒正美(国際政治学者、シンクタンク大礒事務所代表)

平成25年4月26日

           責任自覚してほしい自虐問題

 日本と日本人を貶(おとし)め、中韓両国の対日侮辱攻勢の道具として活用されている悪宣伝は、ほとんど日本人自身がでっち上げた国内産である。

 例えば「2人の少尉の百人斬り競争」は東京日日新聞(現毎日)などの従軍記者が、戦意高揚を目的に書き飛ばした作り話だった。
 戦時中は政府も軍も大本営発表でどんどんウソを拡大した。毎日新聞も「当時は仕方なかった」と、あっさり誇大の事実を認めて謝罪したらいい。

 もっと悪質なのは、いわゆる「従軍慰安婦」である。シロウト作家のホラ話を朝日新聞が1991年8月、事実確認もせずに報道し、わざと勤労奉仕の「女子挺身隊」と重ね合わせて「強制連行」のイメージを刷り込もうとした。

 この捏造記事が今日まで慰安婦問題を拡大させ続け、米国で「性奴隷」と普通に解釈されるまでに大きく育った。歴史に残る大成功(!)であろう。

 靖国神社参拝を外交問題にした元凶は、現役時代の中曽根康弘首相である。

 同氏は在任中10回も参拝していたのに、1985年夏以降、「仲良し」の胡耀邦中国総書記の立場に「配慮」して、参拝を取りやめたと説明している。
 今や配慮が通じる相手ではないことを誰でも知っているが、これで日本の政治家を脅して動かすテコを、中国に与えてしまったのである。

 これは戦後最大級の外交失敗となったが、中曽根氏はその事実を糊塗するために、元A級戦犯の「分祀」を言い出して、事態を格段にややこしくさせてしまった(平成18年8月20日コラムに詳述)。

 神道には「合祀」と「分霊」はあっても「分祀」(いわば除籍)という概念はない。すなわち不可能だということを、自民党保守派の巨頭でも知らなかったらしい。

 そこでさらに「国立追悼施設」の建立という悪知恵が出てくることになるが、もし実現したら、「靖国に参拝してはならない」という中韓の要求に、完全屈服したことになる。

 それどころか、韓国の憎悪はとっくに先に行っており、すべての神社を靖国と同じ「侵略の道具」とみなすまでになっている。

 一般紙は報道しなかったが、数年前、韓国の人気野球選手が読売巨人軍に入団したとき、こういうことがあった。
 恒例の宮崎キャンプに入り、初日にまず全員で地元の神社に参拝し、必勝を祈願するのが習わしだ。しかし、その韓国人選手はひとり車内に残り、神社の土を踏むこともしなかった。
 あとで球団側が彼を教え諭したかどうかは知らない。韓国人の若者の思い込みを正す努力と、韓国政府の間違った対日外交に正しく反論することは共通している。
 そこに「配慮」はいらない。むしろ有害と言えよう。

 大相撲が神事であることと、中国人を含む多数の外国人、それもキリスト教徒とイスラム教徒が力士になっている事実を、韓国民に教えてはどうだろうか。
 そういう役割を、元凶の元首相にぜひ担ってもらいたいものだ。
 
 日本政府は、安倍政権になっても、「首相、外相、官房長官の3人が参拝しなければいい」という暗黙の了解が、中国との間にあると信じていたらしい。
 それが、麻生太郎副総理が参拝したことで中国が怒り、日本側の認識がマボロシだったということが分かった。

 つまり、そんな了解があろうとなかろうと、中国はそんなものに縛られないのである。尖閣問題も同じである。また韓国も同様に、日韓でどんな条約を結び、どんな約束をし合っても、それに縛られると考えないのである。

 事ここに至っても、なお安倍首相と外相、官房長官の3人が、靖国参拝すると政治問題になるからしないと言い続けているのは、奇妙としか言いようがない。
 すでにあらゆる「配慮」が逆目に出ているのだから、遠慮なく大々的に参拝することで内閣の意志を示すしかないではないか。

 尖閣での物理的な意思表示は、危険を伴うので慎重にしなければならないが、靖国や慰安婦問題ではそういう心配はない。
 配慮外交から脱却して、黒田バズーカのような、誰の目にも新鮮な安倍外交をスタートさせる時である。(おおいそ・まさよし 2013/04/26)


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