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国際政策コラム<よむ地球きる世界>No.267
   by 大礒正美(国際政治学者、シンクタンク大礒事務所代表)

令和3年6月28日

     (再掲)タブーの弁護士をあえて目指した本心は?

 ちょうど2年前のコラムをあえて再掲し、大詰めに来たこの騒動の語られない部分をよく考えていただきたい。

(以下、令和元年6月28日コラム)
 御代代わりで皇嗣(英語ではCrown Prince=皇太子)となった秋篠宮殿下が、6月21日の記者会見で「娘から聞いていないのでわからない」と答えたため、メディアは一斉に大きな扱いをせずにいられなくなった。

 また野党数党が参議院選挙に向けて、女性の天皇と宮家を容認すると発表して足並みを揃えた。
 なかでも旧民主党に近い立憲民主党は「女系」天皇も容認するとし、天皇を廃止するのが党是のはずの日本共産党までが、その主張に同調し驚天動地の転向をしてみせた。

 この2つの話題は、全く別の事案のように見えるかもしれないが、実は皇室の将来に影を落とし、皇室の衰退につながる重要な「自壊現象」が進んでいると見るべきなのである。

 まず、秋篠宮家の長女である眞子内親王の非公式婚約者が、過去の皇女(天皇家の娘)の嫁ぎ先とはあまりにかけ離れた人物だということが、世間を大いに惑わせている一件である。

 学生時代に皇女に結婚を申し込んだという非常識さは、それだけでも耳を疑うような「天然」ぶりだが、それを受けたほうも、「内定」記者会見を許した父母両殿下も、さらには宮内庁の幹部たちも、一体何を考えていたのかと疑問を呈されているのは当然であろう。

 お二人の会見時には、相手のK氏は大学院生であり、弁護士事務所でアルバイトをしていたが、メディアはいつのまにか「パラリーガル」と呼び始めた。

 これは米国では確立した法務補助職という専門職だが(州によって資格がいる)、日本にはそういう資格も制度も存在しない。従って、本人がそう名乗ったのであれば肩書詐称ということになる。

 明らかに日本には存在しない専門職名なので、本人か所属の法律事務所がそれを否定するべきだが、未だにそういう訂正はされていない。

 ちなみに、「パラ para」とは「準の」という意味で、「パラミリタリー(準軍隊)」とか「パラメディック(救命士、衛生兵)」などと広く使われている。

 それよりもっと根本的な問題がある。それは、皇室の縁戚が弁護士などの法曹になってはいけないという「常識」が、全く忘れられている点である。

 弁護士は利害の対立する一方に荷担する職業であるから、皇女の嫁ぎ先としては本来ありえないことと言わざるを得ない。
 検事や裁判官も、基本的に同じである。

 もし皇室関連者が弁護士となった場合、彼に依頼したら係争に有利ではないかと誰でも考えるだろう。
 したがって、彼を採用しようとして弁護士事務所からのオファーが殺到することも想像しうる。

 外国(主に米国)の大規模弁護士事務所なら、とんでもない高給を提示して獲得しようとするだろう。なにしろ「次期エンペラーの娘婿」で、「次々期エンペラーの義兄」なのだとしたら、こんな人材を欲しがらない事務所はないだろう。

 こう指摘すると、なぜ過去に皇女が嫁いだ先に法曹がいないのかがよく分かるはずだ。

 昭和天皇の御代から現在に至るまで、皇室から嫁いだだけでなく、皇室に入った女性の家族にも法曹はいない。
 例外的に三笠宮家の寛仁親王に嫁いだ信子妃には、麻生太郎という有力政治家の兄がいるが、それ以外は皆、世間一般の利害が生じないような存在であることに注目したい。

 外国の王家を見ても、王室の縁戚に弁護士などの法曹がいるという話は聞いたことがない。「職業選択の自由」は基本的人権の一部であることは確かだが、王族・貴族・聖職などに関しては、そう一律に適用されるとは限らないと言えるだろう。

 そういう基本的な常識を、秋篠宮両殿下が直接にK氏に伝えてもよかったし、アルバイト先の法律事務所の所長が説諭してもよかったのではないか。

 実際、その事務所が留学費用を援助しているという話も聞くので、あるいは米国ロースクールへの留学が即、皇女との結婚断念を意思表示したのではないかとも受け取れるのである。
 
 当事者のK氏、その事務所、そして全マスコミに、最低限の常識を持って最良の結末に導いてもらいたいというほかはない。(再掲終わり)

 上のコラムと、この2年間に何も解決されなかったことを重ね合わせると、騒動の原因と結果はすべて秋篠宮殿下の「鶴の声」1つにかかっていることが分かる。個人の自由と皇室の一員としての責任は別だという結論に、もう気づいていいころではないだろうか。
(おおいそ・まさよし 2021/06/28)


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