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国際政策コラム<よむ地球きる世界>No.273
   by 大礒正美(国際政治学者、シンクタンク大礒事務所代表)

令和3年12月28日

      軍事力が裏打ちする韓国の対日蔑視

 ことし2021年は、中国とロシアが世界に対して、遠慮なく居丈高になった年として歴史に記録されるだろう。

 中国は、米国に対しても対等以上の強硬さで欧米型の民主主義を拒否し、共産党独裁の体制を独自の民主主義だと主張するに至った。
 習近平「皇帝」は、共産党として3つめの「歴史決議」を採択させ、自ら毛沢東、ケ小平の後を継ぐ「共産党王朝三代目」を内外に宣言した。

 ロシアのプーチン「皇帝」は、ウクライナ国境に12万とも言われるロシア軍を集結させ、アメリカとNATO(北大西洋条約機構)に対して、ウクライナを西側に取り込む考えを断念するよう要求した。
 従わなければ、即座にウクライナに侵攻して軍事占領するぞという構えだ。

 ロシアの経済力は、いまや中国の約1割にすぎないが、見た目には中国と対等の軍事同盟が存在するかのように、日本周辺で中露の合同演習という形で、海空の軍事力を誇示し続けている。

 中国とロシアの軍事力増強は世界的な問題だが、日本にはもうひとつ、やっかいな韓国の軍事力増強という問題があり、今年、とうとう韓国が日本を格下と位置づける決定的な年になってしまった。

 それは一部の識者が憂慮していたことで、軍事・防衛支出が日韓でほぼ拮抗するまでになったという事実である。世界的には日本が米中ロ印に次ぐ5番目で、韓国が僅差で6番目となっている。

 しかし、購買力平価ではすでに韓国の方が日本を上回っているという指摘もある。

 韓国は日本と対等ということをすべての事象で受け入れられず、それならば自分の方が上で、日本は格下だと断定するのが常である。

 つまり、韓国は日本に軍事力で勝ったと自覚(錯覚)したので、ますます日本に対して居丈高に振る舞い、日本蔑視の言動を加速した。そういう年になったということである。

 では、なぜ韓国はそんなに軍事費を肥大させてきたのか、日本国民の多くは疑問に思うに違いない。

 人口が約半分なのに、軍事費が日本と同じというのは、誰が考えても無理があるだろう。
 その理由は簡単で、日本が取得する新鋭装備を、韓国は自動的に同じものを無理に調達して装備してきたからである。

 その始まりは半世紀近い昔のことで、米国が世界最強と謳われた「F-15」主力戦闘機を配備開始し、外国へは同盟国のサウジアラビアと日本にのみ輸出を認めたことである。

 韓国はすぐ日本と同じように調達したいと米国に訴え、あまりにしつこいので米国は少し性能を落とした同機の輸出を認めるに至った。それが「F-15K」である。「K」はKoreaを意味する。

 その次に、日本は艦載の防空システム、いわゆる「イージス」をそっくり輸入して新型護衛艦に組み込むイージス艦の導入(8隻体制)に乗りだした。

 そうしたら韓国も、同じイージス艦を持ちたいと陳情を続け、米国はこれも性能を落としたシステムを韓国に売ることにした。

 3番目は現在進行形で、日本がF-15(第4世代機)の後継として「F-35A」戦闘機、いわゆる第5世代のステルス性に優れた戦闘機を発注し始めると、韓国もこんどは遅れじとばかり同じ機を発注し、日本とほぼ並行して配備を始めている。

 ようやく日本に追いついて満足しているかというとそうではなく、今年9月にはSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験に成功したと発表し、12月初めには軽空母の新造を正式に予算化した。

 この2つは、日本を上回る装備となる。

 SLBMというのは、数ヶ月間も海中に潜むことができる原子力潜水艦に搭載することが前提で、日本は研究も開発もしていない。
 韓国は文在寅大統領がかねてから公約していた原潜開発を続けている。

 軽空母は、日本が先にヘリコプター搭載護衛艦2隻を改修して、空母艦載型の「F-35B」戦闘機が離着艦できるように乗り出したことに対応するものだ。

 韓国は同様のヘリ空母を持っていないので、あわてて3万トン級の軽空母を新造すると決めたわけである。日本の改修軽空母が2万トン級なので、ここでも日本を上回る執念が見て取れる。

 これらはいずれも、あと数ヵ月の任期しかないムン大統領の置き土産となるが、軽空母の建造と艦載機「F-35B」の取得に、日本円にして1兆円はかかるとして問題視されている。

 しかし、来年3月の大統領選で誰が勝ったとしても、日本を軍事的に下に置きたいという韓国の執念に、変化が生じることは期待できない。

 ちなみに、日本がヘリ空母を「F-35B」向けの軽空母に改修する目的は、米軍との合同演習で同機種の米軍機が着艦、給油、離艦できれば、演習の幅が拡がるからである。正確には垂直着艦が可能で、離艦は短距離滑走となる。

 太平洋戦争時とは違って、いま2万トン級では実戦力はない。3万トン級でも同じで、韓国でも「対日示威目的」の壮大な無駄づかいと自認しているようだ。
(おおいそ・まさよし 2021/12/28)


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