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国際政策コラム<よむ地球きる世界>No.298
   by 大礒正美(国際政治学者、シンクタンク大礒事務所代表)

令和6年1月30日

      驚天動地の1年になるか日本国

 元日の能登半島大地震は、今年の日本で何が起きても驚きではない、という覚悟を迫っているのかもしれない。

 なかでも能登被災地の海岸で、約4メートルの隆起が見られたが、これはなんと4千年分の隆起が一瞬にして起きたことになるそうだ。

 これほどの驚きが前提になるとしたら、いままで公には言いにくかったことも、あまり遠慮せずに言明することが可能になる。

 その最たるものは、「天皇が憲法の外に出て上皇になった」という事実と、その前に「自衛隊が憲法の外に存在する」という暗黙の憲法無視である。

 前者は、日本国憲法には「上皇」という地位も名称もないことを国民はよく知っているのに、平成22年(2010)7月、天皇陛下がみずから「皇太子に譲位して私は上皇になる」と宣言し、国民に了解を求めたものだ。

 安倍政権は憲法との不整合に苦慮し、「高齢のため退位」と説明しようとしたが、ご本人はまだ76歳と元気で、「私の譲位」という文言を貫かれた。

 これは「憲法の外に出る」ことを意味し、日本の歴史と文化では「上皇」が存在するときの天皇は、いわば「ジュニア天皇」であったから、譲位を受けた現天皇を擁する現行憲法は一体何なのだ、ということになる。

 今日では、自衛隊の存在を認めない国民は、ほとんどいなくなったと思われるが、憲法学者の多数が相変わらず違憲だと考えているようだ。

 しかし、憲法に自衛隊を明記すべきだという保守派と、違憲のままで置こうとする左派護憲派の両方が、憲法の外に出ている上皇陛下について、何も言わないのは不思議な風景である。

(陛下の意図については、2018年1月コラムを参照)

 もっとも、現行憲法を1字でも改定・改正すれば、憲法を合法と認めることになるので、もともと法的に無効だとする論者は、自衛隊を明記する改正にも反対ということになる。
 ややこしいが、それが実態だ。(前月コラム参照)

 今年はもうひとつ、皇室の関係で、大きな転機が訪れる気配が窺える。

 それは、皇室の安泰存続と男子皇統を将来にわたって確保する問題を、一挙に解決する方法が浮上してきたことである。

 その方法は、実は簡単なことで、戦後に皇室離脱した宮家から、複数の男子と女子を、皇室に戻せばいいというだけのことである。

 それがなぜ最近まで浮上してこなかったのか。一度平民になったらもう皇族ではないので、そういう人物が突然、天皇になるのは国民が納得しないだろうという「常識」が広まっていたからだろう。

 そのような心理的抵抗を払拭するためには、これも簡単なことだが、戦後の皇室離脱は国民の財政負担を考慮した措置であったので、それを撤回・修正する法的措置だけで済む、と国民に説明すればいいのである。

 皇室を将来的に衰亡させようとするマッカーサー司令部の策略だったという説もあるが、それならなおのこと、その意図を覆すチャンスでもある。

 具体的には、昭和22年(1947)10月14日、現行皇室典範に基づいて、11宮家51名が臣籍降下したのを撤回し、同時に現在までの物故者と皇族入りを望まない該当者を、改めて離脱とするのが合理的だ。

 そうすれば、残る宮家の男女が皇族となって皇室メンバーを増やし、現在の3宮家に次ぐ新宮家の男子(親王)が年齢順に、皇位継承順位に位置することになる。
 すなわち、秋篠宮皇嗣(=皇太子)、悠仁親王、常陸宮(83歳)の現在の順位が変わることはない。

 なお付言すれば、6世紀の第26代「継体天皇」は、応神天皇五代の孫で、越前の豪族とはいえ、とっくに平民になっていたことが知られている。
 それでも男系男子の直系として皇室に引き上げられ即位したという歴史を、現代の日本人も軽視すべきではないだろう。

 近代の価値観である男女同権や、西欧の王家のような男女の区別のない直系相続とは違うのだと、日本は論理的に対外発信する好機を迎えていると言えよう。
(おおいそ・まさよし 2024/01/30)


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