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国際政策コラム<よむ地球きる世界>No.256
   by 大礒正美(国際政治学者、シンクタンク大礒事務所代表)

令和2年7月28日

      いよいよ危うくなった尖閣を守る妙手

 中国の対外攻勢がエスカレートし続けており、日本の沖縄県尖閣諸島に対しても「実効支配」を主張するまでに過激化してきた。
 今この瞬間にも、4隻の海警(海軍の下部組織)船舶が連続100日を超えて日本領海と接続水域に侵入し続けている。

 中国外務省は堂々と日本に対し、日本漁船を「中国領海」に入らせないよう要求している。
 これから漁業シーズンが始まるので、中国漁船が大挙して押し寄せ、海警船に守られる形で上陸を果たすというシナリオを考えている可能性もある。

 日本は独力で彼らの行動を阻止することは難しいと考えられる。巡視船の数と質では、すでに中国が優勢であり、陸の拠点からの距離では日本が圧倒的に不利である。

 いったん中国人が上陸してしまえば、日本の施政権が国際的に否定される事態になることは目に見えている。

 実はこのような事態になることを阻止するためには、この一手しかないということを当コラムで8年前に提案している。

 自民党の中から、ようやく2島が米軍に貸与されていることを思い出し、日米で合同訓練したらいいという意見が出てきたようだ。

 しかし、以下の提案のほうがよほど確実で決定的だということが分かるはずだ。是非、手遅れにならないうちに安倍政権が手を打つようお願いしたい。

(以下、2012年12月26日付けコラムを部分再掲)
 乾坤一擲、窮余の一策、これしかないという名案をひとつ示しておこう。

 それは尖閣諸島を一括して、米軍に基地として貸与することである。

 もともと5島のうち久場島はまだ民間人の所有で、防衛省が賃借している。元から国有地の大正島とともに1978年まで米軍の「射爆撃場」として使われたが、中国は一度も抗議したことはなかった。書類上、この2島は今でも米軍に貸与されているらしい。

 人が住める魚釣島など3島と合わせ、5島を一括して改めて米軍に貸与する。そうすれば、施政権は日本にあり、それを米軍が基地として使うという関係が、中国国民にもハッキリと分かる。沖縄県の他の米軍基地と全く同じ位置づけになる。

 基地といっても飛行場や艦隊の使用には小さすぎるので、せいぜいレーダー基地と小型艦艇の常駐、それにオスプレイ用のヘリパッドにとどまるだろう。いわゆる船だまり(漁船の待避所)も、米軍管理の下に新設することはあり得るだろう。

 環境保全のために日米のNGOが協力する姿も想像できるだろう。

 日本にとっては、実質的に何も変わらない。領海と領空の警備も日本の責任で変わらない。ただ、米軍基地の上空や周辺海域にあえて挑んでくる無法者はいなくなるだろう。

 中国の習近平政権も表向きは激怒するだろうが、内心はホッと胸をなで下ろすのではないだろうか。国民を煽りすぎて自縄自縛になっていることは自覚しているはずだ。

 米国にとってもプラスは大きいと思われる。台湾に近接する尖閣に、小なりといえども拠点ができれば、東アジアに要(かなめ)石を置くようなものだ。台湾の住民も安心感を抱くだろう。

 一石何鳥もの利点があると思われるこの案を、安倍新政権が取りあげるかどうか、「公務員の常駐」という公約(もう先送り)とどちらがいいか、とっくりと考えてみていただきたい。(再掲終わり)
(おおいそ・まさよし 2020/07/28)


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